古民家のシロアリ被害、実録レポート。築140年の母屋・床下全面でわかったこと

はじめに:「母屋は大丈夫」と思っていた

古民家を購入するとき、シロアリのことは頭にありました。

離れ小屋については購入前から「シロアリ被害あり」と聞いていたので、そこは覚悟していました。でも母屋は違う。ちゃんとした、長年住み継がれてきた家だから—そう思っていました。

冬のある日、和室の底冷えがひどくて、「断熱のために、取り急ぎスタオロフォームを敷こう・・・畳をめくってみよう」と軽い気持ちで床板を外したときです。

「…これは、もしや」SHIROARI。SHIROARI。SHIROARI。ありゃぁぁぁ。

母屋の床下が、全面シロアリ被害を受けていました。売主さんからは何も聞いていなかったので、正直たまげました。しばらくショックで放心していました。

このシロアリ被害、たぶん売主さんは自覚していたんだと思います。だって床下の根田や大引きは軒並みシロアリに食われてボロボロ、部分的に丸ごと亡くなっているところもあったくらいで、細い棒のようなもので床が抜けないように応急処置みたいな修理跡がありました。
たぶん、この雑な感じのお仕事は大工さんがしたものではなくて、家主さんがした感じ・・・。

前回の記事にも書きましたが「インスペクション」していれば・・・と頭をよぎりました。

この記事では、古民家のシロアリ被害について、わたし自身の実体験をもとに「買う前に知っておくべきこと」「発覚後にどう対処したか」を正直に書きます。

⚠ この記事は兵庫県・築140年の古民家での実体験をもとにしています。すべての古民家に当てはまるわけではありませんが、古民家購入を検討中の方にとって参考になる内容です。

古民家とシロアリ、基本的なこと

シロアリはなぜ古民家に多いのか

シロアリは木材のセルロース(繊維質)を主食とする昆虫です。湿気が多く、暗く、木材が豊富な場所を好みます。古民家の床下はまさにその条件が揃っています。

特に築年数が古い建物は、床下の換気が現代の建築基準を満たしていないことが多く、湿気がこもりやすい。さらに木材が長年の経年変化で柔らかくなっているため、シロアリが食べやすい状態になっています。

ヤマトシロアリとイエシロアリ

日本の古民家でよく見られるシロアリは主に2種類です。

  •  ヤマトシロアリ:全国に分布。湿った木材を好む。床下・土台・柱の根元に多い。被害は比較的ゆっくり進む
  •  イエシロアリ:関東以西・四国・九州に多い。乾燥した場所にも生息できる。群れが大きく被害が広範囲に及びやすい

わたしの古民家がある兵庫県はイエシロアリの生息域でもあります。庭の松の木の根元を掘ったとき、ご近所さんから「松の根にシロアリが入ってたら家も危ない」と言われてヒヤッとしました。

シロアリが発覚するまでの経緯

最初の予兆:庭の松の木

床下の発覚よりも前に、兆候はありました。

中庭に大きな松の木があったのですが、枯れてしまっていました。「枯れたから食われたのか、食われたから枯れたのか…」とご近所さんとも話したほど、根元がシロアリの巣窟になっていました。

根っこが白蟻の巣窟と化している…悲惨。わ、わ、色が白い。結構やばいね。

土壁とわたし Youtube動画より

この松の木の伐採・抜根には、ご近所のパパさんにチェーンソーで手伝ってもらい、3日がかりの大仕事になりました。庭の松がこれだけやられているなら…という不安は、このときから心の隅にありました。

発覚の瞬間:断熱しようとして畳をめくった

冬になり、いつもリビングとして使っている母屋の和室が極寒になりました。夜になると氷点下まで気温が下がり、畳の下から冷気が吹き上がってくる状態です。

「スタイロフォームを畳の下に入れて断熱しよう」という軽い動機で、畳を6枚すべてめくりました。重くて重くて上腕二頭筋が崩壊しそうになりながら。

床板をめくったその瞬間、目に飛び込んできたのが白い虫の群れでした。

「これは、もしや…」SHIROARI。SHIROARI。SHIROARI。SHIROARI。ありゃぁぁぁ。母屋の白蟻については売主さんから何も聞いてなかったので、たまげております…

土壁とわたし Youtube動画より

見事なまでに刻まれた根太(床を支える横木)。シロアリに食われた木は、叩くとカンカンではなくぼそっという鈍い音がします。一目見て、かなりやられているとわかりました。

全室を確認してわかったこと

翌週、田の字型の和室4部屋すべての畳をめくって床下を確認しました。

  •  最初に確認した部屋(リビング使用):最もひどい。根太が全体的にやられている
  •  となりの和室:同程度の被害あり
  •  あまり使っていない2部屋:比較的軽微。根太・大引はなんとか生きている
  •  縁側:床下はほぼ外と同じ状態。シロアリよりも経年劣化が問題

4部屋すべてを確認したあと、ひとつの境地に達しました。

悟りました。古民家に白蟻はデフォルトだ。

土壁とわたし Youtube動画より

笑えないけど笑えます。もうこれは古民家の宿命だと思って、前向きに直すしかない、という気持ちになれました。

発覚後にやったこと・これからやること

まずは現状把握:全部めくって確認

シロアリ被害が出たとき、焦って業者を呼ぶ前にまず自分で全体を把握することをお勧めします。どこがどれくらいやられているかを知らないと、業者との話し合いもできません。

畳をめくる際のコツとして、視聴者さんからコメントで教えてもらったのが「畳の裏にマジックで番号を書いておく」こと。向きと順番が決まっているので、適当に戻そうとするとまったくはまりません。最初にやっておけば戻すのがラクになります。

シロアリ被害の有無を自分で確認する方法

プロのインスペクターでなくても、ある程度は自分で確認できます。

  • 床板・根太を棒や手拳で叩く:被害がない木は「カンカン」、食われた木は「ぼそっ」という鈍い音がする
  • 木材の表面を押してみる:スポンジのように柔らかくなっていたら要注意
  • 白い粉のようなもの(糞)や泥のような筋(蟻道)がないか確認する
  • 床下に潜れない場合はスマホカメラを突っ込んで撮影する

業者に相談するタイミングと費用感

被害の範囲を把握したら、大工さんか専門業者に診てもらうのが次のステップです。

わたしはまず「床下をすべて確認してから、大工さんに一回見てもらって、どこまで補修すればよいか相談する」という段取りを立てました。シロアリ駆除と床の改修は別の業者になることもあるので、順番を間違えないことが大切です。

⚠ シロアリ駆除の費用目安:30坪の建物で15〜25万円程度(薬剤散布)。床材・根太の交換が必要な場合は別途改修費が発生。わたしの場合は母屋全室の床を全面やり直す予定で、費用はこれから大工さんに見積もりをお願いします。

応急処置:プラダンで冬を乗り越える

床の全面改修はすぐにはできないので、今年の冬はプラダン(プラスチック段ボール)を畳の下に敷いて冷気をしのいでいます。断熱効果がどれだけあるかは正直わかりませんが、家にあったものでとりあえず対応しました。

「なんとかなるでしょう。たぶん、きっと。」というのがいまの気持ちです(笑)。

古民家を買う前に知っておくべきこと

内覧だけでは絶対にわからない

これが最大の教訓です。内覧で家の中を歩いても、床下は見えません。「状態がいい」「前のオーナーが大切にしていた」という言葉が正しくても、床下の状況は別の話です。

特に築50年以上の物件については、必ずインスペクション(住宅診断)を依頼することをお勧めします。費用は5〜10万円程度ですが、発覚後の修繕費を考えれば安い保険です。

売主が知らないこともある

今回の母屋のシロアリ被害は、売主さんも把握していなかった可能性があります。長年住んでいても、床下まで定期的に確認している人は少ない。「言わなかった」ではなく「知らなかった」ケースも多いです。

だからこそ、買主側が自衛するしかないのです。

チェックリスト:購入前に確認すること

  1. インスペクション(住宅診断)を依頼する
  2. 床下点検口から床下の状態を確認する(または確認してもらう)
  3. 庭の木・外構まわりに蟻道(泥の筋)がないか確認する
  4. 過去のシロアリ駆除歴・保証書が残っているか確認する
  5. 築年数・地域のシロアリリスクを事前に調べる
  6. 床のフワフワ感・沈み込みがないか歩いて確認する

まとめ:シロアリは「古民家の宿命」と付き合う覚悟を

古民家のシロアリ被害は、珍しいことでも恥ずかしいことでもありません。築100年を超える建物が、シロアリと無縁でいることのほうが難しい。

大切なのは「知った上で買う」か「知らずに飛び込むか」の違いです。わたしは後者でした。それでも後悔はしていないけれど、事前にインスペクションをしていれば、購入価格の交渉材料にもなったし、心の準備もできました。

落ち込んだりもしたけれど、今は元気です(笑)。

母屋の床は全面やり直しになりますが、「ちょうどよかったね、リノベのタイミングだ」と前向きに考えています。直す過程もまた、古民家と向き合う時間です。